加能作次郎

 

能登を愛し、能登の言葉で私生活を描いた作次郎

 

 

 西海の海を臨む風戸の丘に建てられた石碑

加納作次郎君略伝

 

 加納作次郎君は明治19年1月石川県羽咋郡西海村に生まれる。

 幼にして母に死別し、その家運漸く衰え詳さに生活の辛苦を営む。

 青年時代しばらく郷里の小学校にて教鞭を執りしが、後志を立て上京し早稲田大学文学部に入学して坪内逍遥、島村抱月、片山伸諾教授の教えを受く。

 殊に片山伸教授の門に出入りしてその感化を受くる事多し。

 在学中文芸雑誌「ホトトギス」に創刊を発表し、早くも新進作家として嘱望さるる。

 明治44年同大学を卒業、翌年春博文館に入り「文章世界」の編集に関わると同時に作家としての精進を怠らず素朴にして叙情豊かなるその作風は漸く文壇の認めるところとなる。

 昭和16年8月5日東京にて病死。享年56歳。

 故人の十周年に際し、郷土に記念碑の建立を見るは喜びに堪えず。

 碑と共に故人の文名の永遠に伝えらるるべきを確信して友人谷崎精二記す。

                 昭和27年8月 同学小松稲雄書く 

  

主碑には作次郎が次女芳子の結婚の際に贈った

次の言葉が刻まれている。

 

 

 

人は誰でもその生涯の中に一度くらい

 

自分で自分を幸福に思う時期を持つものである。

 

作次郎略譜

 

明治18年1月10日 浅次郎、はいの長男として西海村風戸で誕生

       家業は漁業、2歳上の姉よう

明治20年 母はい死亡、父は浅野ゆうと再婚

明治24年 西海尋常小学校入学 成績優秀のため進学を勧められる

明治28年 富来高等小学校入学 「少年世界」を愛読

明治31年 京都に出奔、叔父の店で丁稚しながら夜学に通う

明治36年 小学校教員検定試験に合格、志雄町の柳瀬尋常小学校

明治38年 退職し東京へ。家庭教師を営む

明治40年 早稲田大学文学部入学 自然主義にも感化される

明治41年 ホトトギスに翻訳文を掲載される

明治43年 ホトトギスに「恭三の父」発表。

明治44年 早稲田大学卒業。早稲田大学出版部に入る

大正2年  博文館に入社。「文章世界」の編集に当たる

大正3年  富来町浄法寺長女島田房野と結婚

昭和16年8月5日 急性肺炎で死去

昭和27年 「このわた集」出版し生地の風戸に文学碑を建立

昭和32年〜 加能作次郎顕彰作文コンクールを毎年実施

 

加能作次郎の作品は、全くの「私小説」である。例えば「恭三の父」では父に来た手紙を読んでくれと言われ、面倒くさがると

 

「何をヘザモザ言うのやい。浅七が見たのなら、何もお前に読んで呉れと言わんない あっさり読めばよいのじゃないか。」

 

こんな平凡な私生活を能登弁そのままで語る。

しかし、人と人との葛藤、愛憎、父と子との遠慮がちな愛情が、どの作品にも素朴に描かれている。父の臨終に当たって「父の生涯」から

 

「お爺さん、私ですよ、分かりますか」と顔を父の上に押し被せながら言った。

と突然、父の目差しが変わった。どこか生死の境でも彷徨していた後のように、暫く惘然としてどことも焦点を定めかねていたその空ろな瞳が急にある一点に、息子のそれの上にじいっと凝らされた。と見る見るその皺深い酒でも飲んだような赤ら顔に言い知れぬ懐かしさと親しさとの、あの見慣れた表情があらわれた。そして・・・・・

 

主な作品

恭三の父 帰省して退屈な日常 父に祭り見物の話を聞く

厄年  京都から帰省して病気の妹お桐を見舞うが、・・・・

汽船 汽船と共に春がやってくる

世の中へ 義母に黙って京都に出奔 叔父の店を手伝うが

祖母  妻の出産のため祖母が上京

屍を嘗めた話 大暴風で多くの船が遭難

母   母が継母だと知ったのは私が六つか七つの・・・

父の生涯  無学文盲の父との思い出

富来行政センター 作次郎ふるさと記念館

 

壁一面に広がる西海村風戸の風景と作次郎の言葉

大正8年32歳 父浅次郎上京

房野の髪型は当時の流行なのだろうか

昭和2年42歳

 

次女和子、作次郎、長男越郎、房野、次男洋吉、長女芳、三女季子

大正9年 向島料亭「入金」にて

田山花袋、島崎藤村、作次郎、前田晃

白石実三

大正9年35歳 大坂への講演旅行にて

 

芥川龍之介、宇野浩二、久米正雄、佐佐木茂索、直木三十五

菊池寛                   作次郎、田中純       

作次郎の創作ノート、日記

リンク

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加能作次郎の作品作次郎の作品「恭三の父」 「少年と海」を全文掲載

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