アラブの大富豪

 

著者   前田高行[マエダタカユキ]

1943(昭和18)年、京都府生まれ。京都大学法学部卒。宇部興産を経て、76年にアラビア石油に入社。79年〜85年、サウジアラビア・カフジ勤務。96年〜99年、JETROリヤド事務所長

 

発行 新潮新書  新潮社 (2008-02-20出版) :\714(税込)

 

 

[概要]

中東には世界の石油と天然ガスの半分1兆2千億バレルがあり、1バレル100ドル、1ドル110円とすると、その価値は1京3千兆円にもなる。日本の平成20年度国家予算は83兆円、GDPは515兆円だから、その156倍、25倍になる。

 

サウジアラビア王家

世界の4分の一の石油が眠る最大の産油国だが、まだ70年近く掘り続ける事が出来る。

第3次サウド王朝初代国王アブドルアジズには36人の王子が生まれ、現在の王子は1000人以上。

最大の建設企業を営むビンラディン(オサマは創始者の息子)など豪商が王家と共存する。

 

ドバイの開発ブーム

世界一の超高層ビル「ブルジュ・ドバイ」800m以上?

やしの木や世界地図の形をした最高級リゾート

世界最大の屋内スキー場

ドバイ港、ドバイ空港のハブ化 エミレーツ航空

ドバイ証券取引所

 

王族投資家アルワリード王子

総資産2兆4千億円。

銀行、ホテル、メディア、ITに投資し30年間で築く

1991年シティバンクを救済し筆頭株主に

 

 [感想]

かつては1バーレル2〜3ドルだった原油価格は、1973年の第四次中東戦争による第一次オイルショックで10数ドルに跳ね上がり、1978年のイラン・イラク戦争による第二次オイルショックで30〜40ドルになった。その後は20ドル前後で推移していたが、2003年のイラク戦争を機に上昇し、2008年7月には147ドルにまで上昇した。

その結果、ガソリン価格は100円台から180円台へと高騰するなど大きな影響を受け、企業収支も国家収支も大幅な赤字に転落したが、一方で産油国には膨大な富がもたらされている。

一体中東産油国はどう考え、その富をどう使っているのだろうか知りたくて本書を紐解いた。

 

中東にとってオイルショックとは言わず、何とオイルブームと言うのだそうだ。当たり前か。

この膨大な余剰資金が流れ込んだ市場は暴騰し、引き上げられると大暴落する。最近の気象変動と同じく、とんでもない動きをしかねない。

先が読めないけれども、アラブの考えることは分からず、予測のつかない大激変がいつどこに起きても可笑しくないな、というのが本書の感想でした。