今の中国が分かる本

 

著者;沈才彬(シンサイヒン) 三井物産戦略研究所中国経済センター長

1944年中国江蘇省海門市生まれ、1981中国社会科学院大学院修士、同大学講師、1984東京大学および早稲田大学客員教授、2001年より現職

主な著書「超語句爆食経済」「中国経済読本」

発行;2007年3月三笠書房知的生きかた文庫

 

中国とアメリカは表面的には「対立」でも水面下では「連携」

歴史的背景

・   1900年の義和団事件でアメリカは清王朝から戦争賠償金を受け取ったが、その金で精華学堂(今の精華大学)を設立し、中国の発展に寄与した。(日本は日清戦争の賠償金で中国を疲弊させた)

・  第二次世界大戦でABCD包囲網を共に担う同盟関係だった。

・   朝鮮戦争でアメリカは中国に勝つことが出来ず、それをアメリカは率直に認めている。

・   以上の歴史的背景から、中国に反米感情はあまりなく、アメリカのことを漢字で「美国」と表現し、敬って「老美」と読んだりもする。(日本のことを小日本と蔑む事がある)

経済的背景

・   アメリカ企業が中国で得た利益がアメリカに還流する構造(2005年で30億ドル)

・   中国の外貨準備高は2006年10月時点で1兆ドルを突破し、世界一。その内7000億ドルが米国債と米金融資産。いわばアメリカ経済を人質にとっている。

・   以上から米中関係は「金融恐怖バランス」の上に成り立つ「ステークホルダー」。

 

中国と日本

似て非なる国

・   「社会主義市場経済」、「経済特区」、「一国二制度」など、中国人は本音と建前を使分け。

・   トップダウン⇔ボトムアップ、即決⇔時間がかかる、最初に結論⇔最後、と意思決定システムが異なる。

・   個人主義⇔チームワーク、転職はキャリアアップ⇔会社への忠誠心、と働き方が違うため、中国人にとって働きにふさわしい報酬やポストが与えられないといった不満がある。

 

靖国神社問題

・   1972年の日中国交正常化の際、戦争責任は一部の軍国主義者にあり、日本国民も被害者であるとして、中国は戦争賠償金を放棄した。(日清戦争後の下関条約では中国から日本への賠償金額は3億5千万円(当時の中国、日本の歳入は1億円、8千万円))

・  侵略戦争の責任者であるA級戦犯が祀られている靖国神社を参拝することは、戦争賠償金を放棄したいきさつからも容認できない行為

・   中国は過去を忘れて未来志向を、日本は歴史を忘れない姿勢を持つことが必要

 

中国の台頭

・   世界の工場は完全に日本から中国にシフトし、2013年には日本のGDPを凌駕する。

・   格差(先進国との、国内富裕層と貧困層、農村部と都市部、内陸部と沿海部)がパワーを生む

不安材料

・   三つの不安「投資の過熱」「融資の過熱」「マネーサプライの過熱」

・   中央政府と地方政府の対立

・   共産党幹部の腐敗 農民から安い価格で土地を徴収し、使用権を外資系企業に売る中で、多額のリベートが横行

・   エネルギーと資源の爆食による世界的なインフレ

・   2030年に2億トン以上の穀物不足⇒世界的食糧危機が発生

・   格差問題

・   環境問題

感想 

 今年、中国はオリンピック、パラリンピックを大成功に実施した。金メダルの数も一番多く、周到な準備が実を結んだのだろう。2010年には上海万博で更なる発展を目指している。

 しかし、何と言っても13億人の国にて、発展に伴う変化や傷みも大きい。 最近のエネルギー資源の高騰も中国が輸出国から輸入国になったことが大きく、次に懸念されているのが食料への影響だ。エネルギー自給率も 食料自給率も極端に低い日本が、その影響が一番大きく受ける。

 遠い隣国などと悠長なことを言っていないで、中国との政治的なつながりや民間同士の経済的・文化的交流を強め、積極的に関わっていく必要がある。