2007年11月10日 三笠書房発行 著者;重村智計

1945年中国遼寧省生まれ 早稲田大学法学部卒 

毎日新聞社ソウル特派員、論説委員、現早稲田大学国際教養学部教授

筆者は韓国人と朝鮮人だけが日本人にとって唯一感情が通じるというが、果たしてそうだろうか。

日本と民族的には一致して同質性のある一方で、歴史、社会、教育の仕組みの違いが異質性を大きくしている。

その違いを理解して付き合っていくことが、隣人として大切なことであり、そのために好著である。

韓国には政党が育たない。5年に一度大統領選挙が行われ、大統領候補を取り巻く新しい政党が作られる。大統領の権力は絶大なため、汚職が当たり前となり、大統領を辞めたとたんに本人や家族が逮捕される。

北朝鮮は世襲制としているが適切な後継者がいない。2000万人の小国なのに100万人もの若者を軍隊に送込んでいるために農業も工業も成り立たず、さらに国際的な金融制裁が効いて石油も買えず軍隊も機能しない。山の木を切って燃料とするものだから、大雨が降ると大水害が発生しますます疲弊する。

北朝鮮は朝鮮半島を統一するために韓国に工作員を送込んでいるが発見され射殺されるケースが増えたため、日本経由で侵入することとし、日本人パスポートを入手するため日本人を拉致した。

韓国には北朝鮮の工作員の活動が奏功したのか、左翼活動が盛んであり、金大中、ノムヒョンと続いた左翼政権が太陽政策として毎年1000億円単位で援助していた。

弊害も表面化し、例えば教育も平等主義を取ったため、金持ちの子弟は殆どアメリカの学校に逃避している。アメリカのハイスクールでの韓国学生乱射事件はその歪みの結果かもしれない。

今回の選挙で左から右に大きくふれ、イミョンバク大統領に代わったため、北朝鮮への援助は大きく削減されるだろう。

牛肉問題でかなり攻撃されているが、左翼勢力の最後の巻き返しと思われる。アメリカの北朝鮮金融制裁解除は、左翼に攻撃されているイミョンバク大統領を支えるためなのだろうか。

現状において中国・韓国は北朝鮮の崩壊を望んでいない。中国としては民主国家が隣に誕生すると、中国の体制が持たなくなる。韓国は北朝鮮の人民を食わせることはとても出来ない。

しかし、いずれ体制は変わっていく。

この国とどう付き合っていくかがわが国としても大きな課題である。