組織行動のまずい学 

どうして失敗が繰り返されるのか

 

6月26日に警察大学校教官教養部長樋口晴彦氏の講演を聞いた。

先生の本を当社に照らして読み解き、再発防止対策は形ばかりを重視しているところがあるのではないか、すでに風化が始まっているのではないか、を再度点検して行きたい。

 

著者  樋口晴彦[ヒグチハルヒコ]

1961年、広島県生まれ。東京大学経済学部卒業後、国家公務員上級職に採用。愛知県警察本部警備部長、四国管区警察局主席監察官のほか、外務省情報調査局、内閣官房内閣安全保障室に出向。現在、警察大学校警察政策研究センター主任教授として、危機管理分野を担当。組織学会、警察政策学会、失敗学会会員

 

発行 祥伝社新書 祥伝社 (2006-07-05出版) \777(税込)

 

 くそみそ理論

くそと味噌を混ぜるとくそ(全く使えない物)になる。

守らなくても問題のない基準が多いと、守らなければ大変なことになる基準もないがしろになる。

つまらない会議が多いと、大切な会議のレベルも下がる。

味噌にくそが混ざらないように、基準も会議も厳選していきたいものだ。

 

『紙』様信仰

組織が官僚化すると、規則や報告書などの文書類が増加し、本来の現場管理に傾注出来なくなる。

はんこの数が多いと、決定までに時間がかかるだけでなく、真剣に見る人がいなくなる。

大切なのは、誰が責任者かを明確にし、責任者が設備の発する声を現場で聞いて、責任を持ってやり遂げることだと思う。

紙とはんこの数を半分にし、現場に行く時間を今の倍に出来ないものだろうか。

 

高名の木登り

木登りの名人が弟子に高い梢の枝切をさせた時、高いところでは何も言わなかったのに、地上に降りる直前に「注意せよ」と声をかけた。

慣れて安心する頃が一番危ない。

新人は規則を呼んでから仕事に取り掛かるが、ベテランは規則を読まずに今までのやり方で実施することが多い。規則が変わっていた場合は大変な事になる。周りの人も新人には注意してもベテランには言い難い。ベテランや上司こそ気をつけて行動したいものだ。

 

小田原評定

北条家は打って出るか、篭城するかと延々と会議をしている内に、機を逃して滅びてしまった。

会議に出席する一人ひとりが、「これは俺の責任だ」と難題を背負ってやり抜く野武士集団であって欲しい。

 

グループシンク

チャレンジャー号は、燃料漏れを起こしたパッキンが危ないとメーカーは分かっていながら、遅れがちな発射スケジュールを取り戻そうと言う雰囲気に呑まれて言い出せず、爆発してしまった。

トラブルが発生すると、たくさんの人が集まって会議を行う。情報を共有し英知を結集するために必要なのかもしれないが、実際に発言するのはごく一部に限られる。

さらに偉い人が出席し発言すると、反対意見も出にくく、流れて行く。

本当に有用な会議とするために、出席する一人一人の「俺はこれに責任を持つ」という意識が欠かせない。

 

ロシアンルーレット

JCO事故は、効率化のために少しルールを緩め、前は問題なかったから次はもう少し緩め、というロシアンルーレットの連続だ。

ルールを少し緩めて実行する事が必要なら、専門家がきちんと判定してルール自体を変え、ルールを遵守する事だ。

後部座席のシートベルトも面倒くさいけれど、ルールになった限りは守っていこう。

 

責任なければ無責任

美浜事故は「情報を隠したりはしないが、登録漏れがあっても積極的に説明しない」というアウトソーシング特有の問題から起きた。

アウトソーシングすると関係者の間で情報や認識がなかなか共有されにくくなるが、そのギャップを埋めるのも道義的責任や法的責任を取るのも、発注元である電力会社だ。

「任せてあるから大丈夫」ではなく、どういった業務をどう実行するのか、どうチェックし、どう報告されるか、をしっかりと認識した上で発注していきたい。